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EISUKKE~野球~音楽~娯楽~

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短編小説第1弾~ラリアットにかける青春~

「バシィィィン!!」

ホール内で乾いた音が響く。
テレビから見る、男同士の戦いに夢中になった。
そんなテレビの前で目を輝かせ、座り込んでいる純粋な少年、「大介」

そう彼にとってプロレスラーとはヒーローそのものなのだ。
父親の影響でいつの間にかプロレスを見続けているのだ。
「父ちゃん、やっぱパワーボムってかっこいいよね??」
「いや、やっぱラリアットだろ!?」
「どうして?」
「あのな、パワーボムってな、自分の力だけじゃ決められんのじゃい!
やられるほうも腹筋を使って状態を起こさなきゃいけないんだ。」
「へぇ~」
「そしたら決まったらかっこいいし、華やかなラリアットのほうがいいだろ
あとラリアットってな、プロレスだけのワザなんだよ。」
「じゃぁ、ラリアットのほうがいい~!!」
そんな会話も小さい頃からこなしていた。
そのときからずっとプロレスラーを目指し、中学のときから体を鍛え上げていた。
彼の右ひじはひどくあざがある。それは小さいときからずっと
ラリアットを鍛え上げていたためである。
周りの友達は、サッカー、野球、今、流行のスポーツのことばかり話していた。大介は無理にプロレスの話を持ち込んだ。
「なぁなぁ、佐々木健介ってしっとるか?」
「ん??あの、野球選手?」
「ちゃうちゃう!プロレスラー!」
「・・・はぁ?知らん話、持ち込まれてもこっちがこまるがな!」
そのとき彼はひどく落ち込んだ。
だがめげずにひとりで猛特訓を続けた。
中学卒業と共に家を出て一人暮らしを始めた。
そして高校へ入学したら、プロレス同好会があった。
もちろん入部した。・・・が、
「なぁなぁ、三沢光晴のエメラルドフロウジョンかっこよくない?」
「はぁ?俺はテイカーのツームストンが好きだね。」
そう、大介は日本のプロレスが好きだった。
だが周りは、アメリカのプロレスが好きなようだった。
しかも、その同好会は、ただDVDを見て、語って、次はどうなるかとかの
研究をしている、簡単に言えば、実際にはプロレスをしない、
プロレス好きが集まった会だった。
そして大介はみんなを説得した。
「リングがないよ~」
が、これは知恵を使い、いらなくなった体育用のマットをつみかさねることで補った。ポールは近くの廃棄場から持ってきた。ロープも工事現場用のひもで代用した。
そして完成した途端、みんな情熱的に燃えた。
100円SHOPでレスラーメイクして
ワザを鍛えて、そしてついには

学園祭で大会を開き、人気爆発、同時に地方の新聞が
取り上げるほどに。

そしてある日電話がかかってきた。
「ぷルルルルっ」
「はい、藤田大介です。」
「あのぅプロレス協会の、佐野ッつぅんだけど来週さ、
プロテストあるんだけどぜひ受けてみない?」
二つ返事で
「はいっ!」
思ってもみない出来事だった
ついに憧れのプロレスラーに近づいてきたのだ。
それは自分の夢でもあり、父親の夢でもあったのだ。

そしてテスト当日、10人くらい集まっていた。
全員、大介よりもでかかった。
そしていきなりテストの担当者が、
「はい、じゃあ今ここで戦ってください。」
と、宴会用の広い部屋で何にも無しで始まった。
と、同時にみんなちかくで目のあったやつから戦っていた。
大介は隣の一番このなかで強そうなやつと目が合った。
と同時に巨人は、大介の体を持ち上げ投げ捨て、ぼこぼこにしてきた。
ふらふらになった大介に巨人は容赦なく殴りかかってきた。
だが大介はボロボロながらも、自分の長所、ラリアットを構えた。
同時に相手も大介もはちあわせになった。
「バシィィィン!」
巨人は吹っ飛んだのかのように倒れた、
が、またすぐに殴りかかってきた。
その瞬間ホイッスルが鳴った。
「はい、おわりねーまた後日連絡するからよろしくー」
周りのやつらも戦いを終えた。
悔いが残った。
そして一週間もたった。連絡はいまだに来ない。
部活に励んでいた。
テストの内容も周りの人には言っていなかった。
そしてスパーリングをしていたころだった。
「ぴぴぴぴぴぴぴーぴ!」
ケータイが鳴り響いた。
「もしもし?」
「・・・ぁの・・・ぁの!」
「はぁ?」
「佐野ですー!お前よかったな
君の事、「スラムウェイズ」が引き取ってくれるって!」
「!!」
なんと合格したのだ。それは新しく出たプロレス団体だった。
驚いた。あんなにやられていたのに!
わけを聞いた。
「どうして俺が?」
「あのなぷろれすっちゅーのはいかに盛り上げるかなんだよ?
きみのラリアットは、プロでもトップクラスだよ!・・・だとさ。」
自分のことが認められた俺はかなりうれしかった。

その晩、久しぶりに父親に電話した。
内容はもちろん、プロレスのことだ。
電話
「父さん!俺な・・・俺な・・・プロレスラーになったんだよ!
父さんの夢かなえたよ!」
「・・・・。がんばれよ。体には気をつけてな。」
父親は、いつもなら頑固っぽかったのに
今日は妙にやさしかった。






それから高校を中退し、正式にプロレスラーになった大介は、
三日後、デビュー戦を控えていた。
「父さん、俺がんばるから。テレビで見守っててくれ!」
そして試合当日、大介は緊張していた。
父親のことを思い出し勇気と自信をもてたのだった。

観客は多かった。
大介の試合は、前説にしか過ぎなかった。
今日はこの後、ベルトのかかった試合があるのだ。
そんなものきにせず試合に集中した。
そして運命のゴングが鳴った。
いきなり大介は雄叫びをあげ、相手に渾身のラリアットをかました。
らりあっと!

すると相手は拍子が抜けたかのようにスルリと倒れた。
審判が確認した。
すると両手を上に上げ、交差させた。
あいては失神してKO。
わずか7秒の幕切れだった。
「これは新たな風を呼ぶか、とんでもない試合になってしまったぁー!!」
そして次の日からか、マスコミにも取り上げられ、業界にも電撃が走った。
そして見る見るうちに、テレビも、雑誌も、ラジオも取り上げ、
国民的に有名となり、
そして実力も名もトップにまで登りつめた。
そして国民的スターとなった彼は、忙しくなってしまい、
たった一人の親の、父親にも連絡することをおこたっていた。
しかし大介は、テレビで俺を見ててくれてるに違いないから、
連絡するまでもないと思っていた。
だが
「プルルルルルッ、プルルル」
父親からの電話だった。
以外だったがとりあえず出た。
「・・・もしもし、大介か?元気にしてるか?」
そのとき、雑誌の取材を控えていた大介は、
怒りっぽく言った。
「あのな、テレビで俺の姿見てんだろ!?
だったら電話しなくてもわかるだろ!!
オレは、プロレスで生きるの!!わかった??
オヤジがどうであろうと、
プロレスで生きるの!!」
「あぁ・・あの・・いいたいことが・・・」

「プツッ・・・ツーツー」
初めてオヤジにはむかった。
なぜかスッキリしていた。
この時点でオヤジとの「縁」を切ったようなモンだった。
「ガチャッ・・・大介さーん取材開始しますんで別室へ・・・」
「はーい。」
待合室を後にした。
待合室にポツリと残ったケータイが何か大介に伝えたいようだった。




三ヵ月後、大介は、史上最速の世界王者戦に挑むことが決定した。
そのことが決定した途端、脳裏に浮かんだのは、
オヤジだった。だが縁を切ったんだ、と連絡をしなかった。


そして運命の試合前日、大介はピリピリしていた。
これに勝てば、伝説と共に歴史に残り、金も、何もかもが手に入ることがわかっていた。
前売りチケットもこれは、と売り切れていて、
当日ドームが満員だと言うことはわかっていた。
これほど緊張した試合はなかった。
そして精神統一を自分の部屋でしていたときだった。

「ぷるるるっぷるるるっ」
大介の姉から久しぶりの電話だった。
「んあ゛っ??なんだよ!?」
「大変なの!!父さんが、父さんが・・・!」
「え・・・?」
事情を全て聞いた。
父さんが倒れ、今「危篤」(きとく)状態だそうだ。
それでもって明日が山場らしいようだ・・・
もちろん大介は悩んだ。ここからは飛行機で行っても、
試合には間に合わない。かといって、刻一刻と時は迫っていた。

プロレスをとるか、オヤジを見とるか・・・。
選択は二つだった。
一回姉に相談した。
「オレ・・・どうすればいい・・・?」
「・・・お父さんいつも大介・・・大介・・・って、
今は寝てるけど、倒れるまでずっと・・・
だから、プロレスをとってもお父さんにとっても本望だと思うよ。
・・・!?あ!?ダメだよ!!」
「ん??どうした!?」
「・・・けぇ・・・大介ぇ・・・」
「オヤジ!!!」
よぼよぼな声だった。
なんと医療器具を取り外して、公衆電話のところまで来たのだった。
「お前に・・最後に・・言いたいことがある・・・
お前はいつも父さんの夢をかなえようと、・・・
してくれた・・・この間ぁ・・・父さんに初めて反発したな・・・
あのときは・・・うれしかった・・・お前は・・・
唯一父さんにしていない・・・「親孝行」だ・・・
お前がちゃんと自分の意志を持ってるかどうかが・・・
心配だったんだ・・・だけどぉ・・・
はっきり父さんにひぃ・・・
自分の意志を伝えてくれた・・・・
だからとってもうれしかった・・・
それがお前からの・・・最後の「親孝行」だ・・・・
最後に一言いわせてくれ・・・
お前は父さんの誇る最高のむす・・・こ・・・だ・・・・
んぐ!!あがっ・・!!うがぁ!」
「父さぁ~ん!!」




オレは今日も最高のプロレスラーとして、生きている。

そう、それはファンの願い、自分の願い、

そしてオヤジの願いでもあるんだ。

それがオレがプロレスラーとしていることの

宿命でもあるからだ。


END








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